バニーちゃんは同級生

僕はよく、東京の門前仲町という街で飲む。

文字通り、深川不動尊の門前町として栄えた街で、古くからあるおいしい料理屋さんが多い。

女の子がいる飲み屋も結構あって、大好きな街である。

バニーガールパブの看板

ある日のことだ。

いつものように行きつけの小料理屋で飲んだ後。

街をぶらぶらしていると、新しい飲み屋ができているのを見つけた。

バニーガールパブ キュート」。

何と魅力的な店名ではないか!

 世界3大発明

余談だが、一説には、バニーガールは1960年、米国の男性雑誌「プレイボーイ」が主催して開いたパブの衣装として初めて採用されたという。

セクシーな黒のスーツ、うさみみ、蝶ネクタイ、カフス――。

女性らしさを演出するのにこれ以上の服装はない。

考えた人は天才である。

大発明である。

世界3大発明と言えば、「火薬」「活版印刷」「羅針盤」だが、羅針盤の代わりに「バニーちゃんスーツ」を入れても何の違和感もないであろう。

ナイスバディのゆかりちゃん

 話は戻って「バニーガールパブ キュート」だ。

 僕はもちろん、店に入った。

 ボックス席が6、7個ある店で、20歳前後のバニーちゃんが10人前後いた。

 素晴らしい眺めである。

 うきうきである。

 僕の席には、ナイスバディの「ゆかりちゃん」というバニーちゃんが座った。

 ゆかりちゃんの衣装はやや細身で小さく、かわいいおしりがはみ出しそうだった。

 「なんか、私に合ったサイズの衣装がなくて。」

 恥ずかしそうなゆかりちゃんもナイスである。

 ゆかりちゃんの高校

 21歳のゆかりちゃんはとてもいい子で、話もとても楽しかった。

 もうそろそろ時間です、という時になって、経緯は忘れたが、東京・中野の話になった。

 「えー、私高校が中野なんですよ。」

 ゆかりちゃんがいった。

 「へー、僕の息子も高校中野だよ」。

 ゆかりちゃんが聞いた。

 「どこの高校なんですか?」

 「うーん、名前忘れたけど、なんかバレーボールの強いとこ」。

 「もしかして東亜学園?」

 「そうそうそれそれ」。

 「えーっ、私も同じ学校!

 ゆかりちゃんは息子と同級生

 ゆかりちゃんがさらに聞いた。

 「子どもさんのお名前はなんていうんですか?」

 「あべこうただよ」。

 ゆかりちゃんは目を丸くしていった。 

えーっ!!!同級生です!」。

ゆかりちゃんによると、帰る方向が同じで、何度か一緒に電車で帰ったこともあるそうだ。

「この店で働いてるの内緒なんです。息子さんに言わないでくださいね」。

ゆかりちゃんは僕の耳に口を近づけて小声で言った。

もちろん僕も異存は無い。

バニーちゃんパブで息子の同級生の女の子に鼻の下を伸ばしていたとはさずがに誰にも言いにくい。

それから2、3度店に行ってゆかりちゃんと話した。

さすがの僕も口説くのは無理だ。

ゆかりちゃんはほどなく店を辞めてしまった。