ある日曜日。僕はなじみの乗合船でアジを釣りにいった。
40代の父母と20歳の娘
先に船に乗っていた僕の隣に、3人連れが乗り込んできた。40代の夫婦と、20歳そこそこの娘だった。
若い娘さんは、あまり釣りにふさわしくない格好だった。
ジーンズのぴちぴちのショートパンツに、黒のタンクトップ。健康的な肌がまぶしい。肩までかかるロングヘアで、かなりの美形だった。
隣からかわいい声が
いつもはおじさんばかりで、若い女性は珍しい。僕はちょっとドキドキした。
沖へ出て釣りが始まると、僕は娘さんのことを忘れて釣りに没頭していた。その時、隣からかわいい声がした。
「いやーん、大きい」。
大きなアジが釣れた
ドキッとして隣を見ると、娘さんに大ぶりのアジがつれていた。
歓声は大きなアジが釣れた、という意味だった。変な意味では無い。それはそうであろう。
アジって持ちにくいよね
「えーっ、ヌルヌルしてる」。
また隣の娘さんが声を上げた。
もちろん、魚がヌルヌルしているという意味である。それ以外の何モノでもない。
またしばらくすると、娘さんが慌てた声で言った。
アジって結構暴れるよね
「あーん、出ちゃう出ちゃう」。
何のこと?
僕が横目でみると、バケツに入れたアジが勢いよくはねてバケツから飛び出そうになっていたのである。まあ釣りではよくあることだ。
釣り針が根掛かりするよね
また少したつと、娘さんが声を上げた。
「あっ、ひっかかっちゃった」。
なにー??
今度は釣り針が海底の岩にひっかかかってしまい、竿があがらなくなっていたのだ。まあ釣りでは根掛かりといいよくあることだ。
しかし、「ヌルヌル」「出ちゃう」「ひっかかった」と3拍子そろうと、なんか意味深ではないか。
大声で父親に向かって
しばらく何事も無く過ぎ、もうさすがに娘さんの口から、紛らわしい言葉は出ないだろう。
そう思った矢先である。
「ねえ、パパ。大きくて太いのちょうだい」。
娘さんは父親に向かって大きな声で叫んだのだ。
釣りはエロと見つけたり
僕は思わずのけ反ってしまった。さすがにこれはなんのことだかわからなかった。
エサの青イソメ(ミミズのようなやつです)が残り少なくなってしまい、もう小さくて細いのしかなくなってしまったので、大きくて太いエサをちょうだい、という意味であった。
帰りの船の中で僕は思った。
「釣りって意外にエロい」。