僕の高校は全寮制の男子校であった。
若い女の子にそういうと、一部の女子は目を輝かせる。
「ねえねえ、やっぱりさー、BLとかあるの?」
「そんなあるわけないじゃん」。
僕がそう答えると、
「なーんだ」。
となってこの話は終わる。
想像したくない
大体、コミックで描かれているような二次元の恋は美しいかもしれないが、現実の男同士の絡み合いなど想像するだけで気分が悪くなるではないか。
しかし、実は実際にあったのである。
忘れられないが、出来れば封印しておきたい体験談である。
屋上での出来事
僕はある日、いつものように寮の屋上に煙草を吸いに行った。
高校生なのでもちろん喫煙は禁止されている。
みつかれば停学である。
僕は.屋上に向かうドアをそっと開けて、あたりをうかがった。
すると、屋上のちょっとしたコンクリートの段差のところに、先客が2人いるのを発見した。
2人は僕に背中を向けて、肩を並べて座っていた。
重なりあうシルエット
陽はまさに暮れなんとし、美しい夕焼けは少しずつ夜の帳に吸い込まれんとしていた。
僕には2人の背中のシルエットだけが見えた。
1人は非常に大柄だった。
もう1人は小柄で細かった。
小柄な1人のほうが、大柄の1人のほうにもたれかかり、大柄なほうは隣の小柄な子の肩を抱き抱えていた。
体重差2倍の2人
顔が見えなくても僕には2人が誰かわかった。
シルエットに非常に特徴があったからだ。
柔道部の大川君と、秀才の井沢君であった。
大川君は身長185センチ、体重100キロ越えの堂々とした体躯である。
柔道部で全国大会に出場したこともある。
井沢君は京都の老舗繊維問屋のボンボンで、身長165センチ、体重は50キロを切るぐらい。
色白でまさに京都のお公家様の血を引いているかのような細面の美男子であった。
沈む夕日に照らされて
2人は沈む夕日を見ながら2人だけの世界に浸っていた。
僕は何とも言えない、決して見てはいけないものを見てしまった背徳感でお尻がムズムズするような感触を覚えた。
その時である。
2人の顔は近づいて
2人はそっと体を離してしっかりと見つめあった。
大川君が井沢君に覆いかぶさるような体制でキスをした。
井沢君は色白のか細い手をしっかりと大川君のがっしりとした背中に絡めていた。
まじか!
(◎▽?×④!z!!!!!!!!)。
僕は心の中で悲鳴を上げた。
目の前で繰り広げられている光景が全く理解できず、パニックに陥った。
ボーイズ・ラブである。今で言う腐女子の大好物である。
噂には聞いていたが、まさか自分の身近でそんなことがあるとは思いもしなかった。
僕はそのことはそっと胸にしまっておいた。
それから卒業まで、大川君と井沢君の顔をまともに見ることができなかった。
いまだに理解できず
残念ながら彼らに感化されることはなく、ただのフツーの男子だった僕はいまだにずーっと女好きなのである。