おしり枕の誘惑

 「ねえ、なんかしてみたいことないの」。

 みゆきちゃんが言った。

思ってはいるけれど……

 僕は頭の中はスケベであるが、実際の行為は淡泊である。

いつも、一戦交える前は、

「あんなことや、こんなことや、そんなこともしてみたい」。

などと思っているのだが、いざ実践になると、たいしたことはできない。

どうも相手に気を使ってしまい、いつもワンパターンになってしまうのだ。

 そんな僕との行為が物足りなかったのか、はたまたサービス精神からか、みゆきちゃんからのありがたい申し出があったのだ。

ひざ枕がいい!

僕はすぐさま、

「ひざ枕がいい!」

と答えた。

おじさん世代の人気のフォーク歌手、吉田拓郎さんの「旅の宿」という曲の歌詞の中に、

「僕はすっかり 酔っちまって 君のひざ枕に うっとり」

というフレーズがあった。

まだ中学生で童貞だった僕は、

(ああ、いいなあ、ひざ枕。男のロマンだよなあ。ほんとにうらやましいなあ)。

と悶々としながら聞いていたのである。

ほんのり夢心地

「ひざ枕?いいよ」。

みゆきちゃんが笑って言った。

みゆきちゃんがベッドの上で正座する格好で、僕はみゆきちゃんの足の方向を見る向きでひざに顔を乗っけた。

ふたりとも裸である。

頬に当たる肌がすべすべで、弾力があって、ほんのり暖かい。

なるほどいいものである。

しばらく堪能していると、みゆきちゃんが、

「ねえ、こっち向かなくてもいいの」。

と言った。

素晴らしい景色

もちろんそっちも経験したい。

僕は頭の位置を変えた。

すると全然違う風景が目に飛び込んできた。

ちょうど視線の真っ正面にみゆきちゃんの足の付け根が見える。

みゆきちゃんは全身脱毛していたので、子どものようなつるつるの1本線が見えた。

少し目を上げると、腰から胸のラインが見え、下から見上げるような格好でみゆきちゃんの顔が見えた。

みゆきちゃんはにこっとほほ笑んだ。

またこれも絶景である。

僕に絵心があったら早速絵筆を取っていたであろう。

うん、眼福眼福。

ぼくは大満足した。

 「どう、よかった?他にはなにかある?」。

みゆきちゃんが言った。

次は何枕にしようか……

このとき、僕の頭の中は「〇〇枕」というワードでいっぱいだった。

あと試すとすれば、「おっぱい」か「おしり」であろう。

ただ、おっぱいについては、みゆきちゃんには頼みにくい事情があった。

以前、僕はみゆきちゃんの胸に触りながら、

「うん、かわいい。かわいいちっぱい

と言ってしまったのだ。

みゆきちゃんは即座に反応し、

「そんなこと言うんだったら、もう触らせてあげない」。

と本当に怒ってしまった。

みゆきちゃんの胸は自称Dカップだったが、おまけしてBカップであった。

おしり枕がいい!

おっぱいはまずい。

だとすると、残されたのはおしりである。

「じゃあ、おしり枕!」

僕が元気に言うと、みゆきちゃんはニコッとして

「いいよ」。

と言ってくれた。

ばかな男によくぞ付き合ってくれたものだ

みゆきちゃんがうつ伏せになりベットに寝そべって、僕はぷるんとしたおしりに頭を乗せた。

ひざ枕(というか、あれは実際はもも枕ですよね)、に比べると、つるつる感はさらに上である。

ひざ枕に比べると、気持ちひんやりしている。その感触がまた気持ちいい。

ただ、目に映る景色は右を向けば足、左を向けば背中、で、顔が見えないために比較的単調である。

もう大満足

 「ねえ、満足した?」

 とみゆきちゃんが聞くので、僕は

「うん、もう大満足」。

と答えた。

 僕のために色々してくれたみゆきちゃんが、ほんとうに愛おしく思えた。

 ひざ枕、おしり枕ともに、言葉では説明したが、やはり実際にやっていただかないと感触はわからないであろう。

是非読者の皆様にも試していただきたい。

とてもいいもんである。