僕は奥手だった。
性に目覚めたのは中2の夏である。
ある日机に向って勉強をしていて、何を思ったかふとおちんちんに手をのばしてみた。
触っていると妙に気持ちいい。
むずがゆいというか、体の中がふわふわするというか、とにかく今までに感じたことがない感覚だった。
ある日衝撃が
それからなんとなく同じ行為を繰り返すようになっていた。
2週間くらいたった日の事である。
急に脳天を突き上げるような感触がして、僕は生れて初めて射精した。
悪い病気に
僕はその方面の知識はほとんど無かった。
最初に思ったのは、ばい菌が入って膿が出たのではないか、ということだ。
当時はまだパソコンもインターネットも携帯電話もない時代である。
ググって簡単に調べることはできない。
恥ずかしくて友達に聞くこともできない。
病院に行って見ず知らずの人に相談するなんて狂気の沙汰である。
僕は1人で調べてみることにした。
誕生プレゼントの顕微鏡
生物の生殖についての知識はあったので、精子かもしれない、とも思った。
ただ、自分のイメージとはかけ離れていたので、精子なのか膿なのか、判断がつかなかったのである。
小学校5年生の誕生日プレゼントに、親に買ってもらった顕微鏡が僕の部屋にはあった。
それで見てみることにした。
暴れ狂うシラス
謎の物質を慎重にプレパラートに移す。
おそるおそる顕微鏡をのぞき焦点を合わせた。
「〇×△◇!!!!!!!!!!」
予想だにしなかった光景に僕はのけぞった。
白い頭に細いしっぽがついた、まさにオタマジャクシのような生き物が何百匹もいた。
漁師さんが網で水揚げしたばかりのシラスのように、暴れ狂うように泳ぎ回っていた。
僕も生き物
僕も魚と同じ生き物なんだ。
しかし、なんて不思議なんだろう。
後でわかったことだが、人間の1回の射精には、1億を超える精子が含まれているのである。
毎分、驚くべき数が生産されているのだ。
今は……
あれから40年以上が過ぎた。
子供も3人できたので、もうお役御免である。
今は数えるほどのおたまじゃくしが元気なくふにゃふにゃと尻尾を振っていることであろう。