マンチカンの呪い

もう何年か前になる。

僕は半年ほどパパ活サイトに登録していた。

初めてのパパ活

当時僕は50を超えたところで、もはや20代の子とつき合うのは難しいと悟るようになった。

どんな出来事が待ち受けているのか、体験してみたい気持ちもあった。

実需と好奇心が半々、といった感じだった。

始めて約束をして待ち合わせたのが、27歳のみきさんだった。

13時に新宿の紀伊国屋書店前で待ち合わせた。

顔写真はなかったので、どんな顔かはわからない。

僕は15分前に着いて、街行く女の子を眺めながら、みきさんを待った。

5分前、セミロングで清楚な感じのとびきりかわいい子が歩いてきた。

あの子だったらいいのに

「あの子だったらいいのになあ」。

そう思った時、そのかわいい子が僕に近づいてきた。

「しゅんさんですか?」

ほんとにその子だったのだ!

それから4、5回ご飯に行った。

元は売れっ子アイドル

外資系ホテルのレストランや老舗の名店など、毎回超一流の店をリクエストされた。

「20歳前後の頃はアイドルをしていて、CDも1万枚売れたのよ」。

整った顔立ちを見ると、うそではなさそうだ、と思った。

東京・神楽坂の料亭で食事をした夜、僕たちは並んで歩いていた。

神楽坂は昔から、お忍びの人も多い古い街である。

僕たちの周りに人はいなかった。

毎月20万にして!

すると、みきさんが僕の腕に急にしなだれかかってきて、僕の目を見ながら言った。

「毎月20万にして。お願い。いいでしょ」。

僕の許容範囲の2倍の金額だ。

正直高い、と思ったが、こんなかわいい子としてみたい、というスケベ心が勝った。

「いいよ」。

僕が言うと、

「うれしい!」

と僕に抱きついてきた。

月に2回の付き合い

それから半年ほど、月に2回コンスタントにみきさんに会った。

僕は毎月始めに20万きっちり払った。

食事代も含めると、正直給料だけでは足りない。

毎月少しずつ借金が増えたが、気にならなかった。

みきさんは顔もスタイルも完璧だった。

みきさんの唯一の欠点

1つだけ欠点があるとすれば、おっぱいがかなり小さいことである。

ある日、僕がみきさんのおっぱいを触りながら、

「かわいいおっぱい。かわいいちっぱい」。

と言ったら、みきさんは始めて怒った。

「そんなこと言うなら、もう触らせてあげない」。

僕は平謝りに謝った。

「Cカップはあるのよ」。

というが、これはどう見てもウソだった。

 半年ほどたったある日のことである。

 みきさんからラインが来た。

マンチカンの子猫

「ねえねえ、子猫買ったの。すごくかわいいでしょ」。

送られてきたのは、みきさんが子猫に顔を寄せてほほ笑む写真だった。

「ほんとかわいいね!なんていう種類?」

僕が返事すると、

「マンチカン。短足でモコモコでかわいいのよ。ペットショップで一目ぼれしたの!」。

と返ってきた。

「高かったでしょ。いくらだったの」。

僕が聞くと、衝撃の答えが返ってきた。

83万円」。

お手当の4カ月分

僕が毎月せっせと払った20万のお手当の4カ月分である。

婚約指輪のダイヤだって給料の3カ月分である。

僕が借金をしてまで貢いだお金をこんなに無駄に使うんだ

そう思うと、急速に冷めていく自分がいた。

程なくして僕たちはお別れした。